このブログでは、ヨーガ哲学の古典『ヨーガ・スートラ』を、一節ずつ丁寧に読み解きながら解説しています。
原典の考え方を大切にしつつ、現代の心のあり方や日常生活と照らし合わせ、その意味を考察しています。
ヨーガをポーズだけでなく、心の仕組みや生き方の智慧として理解することを目的に綴っています。
今回の記事も、その流れの中の一節についての考察です。
ヨーガ・スートラ第2章33節
『疑念に心が妨げられる時は、それに対抗する手段を念想し続ければよい』
解説
第2章33節では、心が乱れたときの対処法が示されています。否定的な思いや乱れた考えが浮かんできたときには、その反対の性質を意識的に思い起こすことが大切だと説かれています。
私たちの心には、怒りや嫉妬、執着、不安など、さまざまな思いが自然に生まれます。それらを無理に押さえつけるのではなく、その心の動きに気づき、反対の方向へと意識を向け直すことがヨーガの実践です。たとえば、誰かを傷つけたい気持ちが生まれたときには、思いやりや優しさを思い出す。奪いたいという思いが出てきたときには、与える気持ちを育てる。そのように心の向きを少しずつ整えていきます。
この教えは、心をただ静めるのではなく、心の質そのものを育てていく実践を示しています。思いは自然に生まれるものですが、それに流されるのではなく、どの思いを育てるかを選び直すことができるということ。第2章33節は、そのための具体的な心の扱い方を教えてくれている大切な節です。
現代視点での解釈
第2章33節は、心にネガティブな思いが浮かんだときのシンプルな対処法を教えてくれています。それは、その思いとは反対の性質を意識的に思い出し、心の向きをそちらへ向けることです。
たとえば、誰かにイラッとしたとき。そのまま怒りに任せてしまうと、気持ちはどんどん荒れていきます。そんなときに、「この人も疲れているのかもしれない」と想像してみたり、「今日は余裕がなかっただけかも」と少し見方を変えてみる。すると、怒り一色だった心に、ほんの少しだけやわらかさが戻ってきます。
また、誰かと比べて落ち込んだときに、「自分には何もない」と考え続ける代わりに、「今できていることは何だろう」と視点を変えてみる。嫉妬が湧いたときに、「あの人すごいな、私も少しずつやってみよう」と前向きな気持ちを育ててみる。そうやって、心の方向を少しずつ修正していくことがこの教えの実践です。
大切なのは、嫌な感情が出てくること自体を責めないこと。心は自然に揺れるものだからこそ、そのたびに「どの気持ちを育てたいか」を選び直す。第2章33節は、心に振り回されるのではなく、心のハンドルを自分で握り直す練習を教えてくれているのです。
