ヨーガ・スートラ第1章30節|心を乱す九つの障害

この記事の内容について

このブログでは、ヨーガ哲学の古典『ヨーガ・スートラ』を、一節ずつ丁寧に読み解きながら解説しています。
原典の考え方を大切にしつつ、現代の心のあり方や日常生活と照らし合わせ、その意味を考察しています。

ヨーガをポーズだけでなく、心の仕組みや生き方の智慧として理解することを目的に綴っています。
今回の記事も、その流れの中の一節についての考察です。

ヨーガ・スートラ第1章30節

『病気、無気力、疑い、不注意、怠慢、渇望、妄想、新たな境地が見出せないこと、心の不安定さ、これら9つの障害が乱心の原因となる』

解説

第30節では、心を静めようと実践を始めたときに現れやすい 九つの障害 が示されています。
それは、病気、無気力、疑い、怠慢、注意散漫、感覚へのとらわれ、誤った理解、集中の欠如、不安定さです。

これらは、修行がうまくいっていないから起こるものではありません。
むしろパタンジャリは、心を整えようと真剣に向き合い始めたときにこそ、自然に現れる心の働きとして、この障害を挙げています。

心はもともと外に向かい、変化し続ける性質を持っています。
そのため、静けさや集中を目指そうとすると、
今まで気づかなかった揺れや抵抗が表面化してくるのは避けられません。
第30節は、その現象をあらかじめ示し、道の途中で迷わないようにするための指針とも言えます。

ヨーガでは、これらの障害を「排除すべき敵」として扱いません。
また、自分を責める理由にもなりません。
今の心の状態を正しく知るためのサインとして受け取ることが大切だとされています。

第30節が伝えているのは、
ヨーガの実践とは、常に静かで順調な状態を保つことではなく、
揺れや停滞を含めて心を理解し、扱っていくプロセスそのものだということです。

現代視点での解釈

第30節では、心を落ち着かせようとしたときに現れやすい「障害」が挙げられています。
病気、やる気が出ない状態、迷い、集中できなさ、先延ばし、刺激へのとらわれ、誤解、不安定さなどです。
これらは修行者に限らず、誰の心にも起こりうる、ごく自然な反応だとされています。

現代の生活に置き換えると、
「生活を整えよう」「少し自分のための時間を持とう」と思い立った直後に起こる流れが近いかもしれません。
体調がすぐれず計画通りに進まなかったり、
「これって本当に意味があるのかな」と疑いが出てきたり、
スマートフォンの通知や周囲の音に気を取られて集中できなかったりします。
しばらく続けたあとで、忙しさを理由に中断してしまうこともあります。

第30節が示しているのは、
こうした状態は「意志が弱いから起こる」のではなく、
心を整えようとし始めたときに、自然と表に出てくる心の性質だということです。
何も変えようとしなければ、これらは表に出てこないことも多いからです。

ヨーガでは、
障害を無理に排除したり、自分を責めたりすることは勧められていません。
「今、心はこういう反応をしているんだな」と気づき、理解することが大切だとされています。
その気づきがあることで、つまずきの中でも実践をやめず、
また静かに自分に戻ることができると考えられているのです。

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