このブログでは、ヨーガ哲学の古典『ヨーガ・スートラ』を、一節ずつ丁寧に読み解きながら解説しています。
原典の考え方を大切にしつつ、現代の心のあり方や日常生活と照らし合わせ、その意味を考察しています。
ヨーガをポーズだけでなく、心の仕組みや生き方の智慧として理解することを目的に綴っています。
今回の記事も、その流れの中の一節についての考察です。
ヨーガ・スートラ第1章11節
『過去に経験し、今でも忘れられていないものを対象とする作用が意識に戻ってくるとき、それが記憶である』
解説
パタンジャリさんはヴルッティ(考え)はプラマーヤ(知覚)、ヴィパルヤヤ(間違い)、ウィカルパ(想像)、ニッドラー(眠り)、スムルティ(記憶)の5種類あると説いていて、今日はそのうちのスムルティ(記憶)詳しく復習していきます!
ここでいう記憶とは、ただの思い出ではなく、
過去に経験し、今も心に残り続けているものが、
ふと意識に戻ってくる働きのことを指します。
私たちの心には、昔の出来事・感情・印象が、
形を変えながらずっと残っています。
嬉しかった体験だけでなく、人の言葉に傷ついたこと、不安だった場面、怖かったでき事なども、
そのまま心の奥にしまい込まれていることがあります。
そして厄介なのは、その記憶の中には前回お話ししたような「間違って覚えてしまったもの」や「ただ想像しただけの思い込み」もしっかり心に刻まれてしまうということ。
本当は事実とは違っていても、心はそれを“記憶”として保存してしまうんですね。
ヨーガでは、このような記憶が現在の感情や判断を曇らせ、苦悩の種になることがあると考えます。
だからこそ、自分がどんな記憶を握りしめているのかに気づき、その間違いを正していくことが大切だと説かれているのです。
呼吸法、アーサナ、瞑想といったヨーガの実践を通して、私たちは過去に縛られた心を少しずつほどきながら、「今ここ」に戻る力を育てていきます。
ヨーガの智慧を学び、理解を深めていくことで、
過去の記憶に振り回されるのではなく、
自分自身が自分の心をコントロールできるようになっていく。
これが、スムリティ(記憶)という心の働きと向き合う上でヨーガが伝えている大きなメッセージなのだと思います。
現代視点での解釈
ヨーガ・スートラ第11節では、「記憶」も心のはたらきの一つだと説かれています。
ここでいう記憶とは、ただ過去を思い出すことだけでなく、以前に経験したことが、形を変えて今の心に影響を与え続けている状態を指します。
たとえば、過去に人間関係で傷ついた経験があると、
「また同じことが起きるかもしれない」
「どうせうまくいかない」
と、今の状況とは関係なく不安がよみがえることがあります。
目の前では何も起きていなくても、過去の経験が、今の見方や反応を決めてしまうのです。
また、成功体験も同様です。
以前うまくいった方法に強くとらわれるあまり、
今の状況に合っていない選択をしてしまうこともあります。
これも、記憶が現在の判断に影響している例だといえるでしょう。
第11節が伝えているのは、
記憶が悪いということではありません。
むしろ、私たちが学び、成長するために欠かせない心の働きです。
ただし、その記憶に無自覚に引きずられると、心は過去に縛られ、今を見る力が弱くなります。
ヨーガでは、
「これは今起きていることなのか」
「それとも、過去の記憶が反応しているだけなのか」
と気づくことが大切だと考えます。
その気づきがあることで、記憶に振り回されず、今の現実に落ち着いて向き合えるようになります。
