ヨーガ・スートラ第1章28節|音を唱える実践とその効果

この記事の内容について

このブログでは、ヨーガ哲学の古典『ヨーガ・スートラ』を、一節ずつ丁寧に読み解きながら解説しています。
原典の考え方を大切にしつつ、現代の心のあり方や日常生活と照らし合わせ、その意味を考察しています。

ヨーガをポーズだけでなく、心の仕組みや生き方の智慧として理解することを目的に綴っています。
今回の記事も、その流れの中の一節についての考察です。

「この聖音を反復誦唱(ジャーパ)し、この聖音の意味するものを静慮(バーヴァナ)しなさい」
と説かれています。

つまり、プラナヴァ(聖音アウン)をただ繰り返し唱えるのではなく、その音が象徴している意味に心を向けて瞑想することが大切だということです。この実践は、ジャパ瞑想と呼ばれています。

第28節では、前の節で示された聖音アウンを、どのように実践として深めていくのかが具体的に語られています。

音として唱えること(ジャーパ)と、その意味を心で観想すること(バーヴァナ)。この二つがそろってはじめて、実践としての力が生まれるとされています。

マントラ(聖音)を繰り返し唱える瞑想は、インドの伝統の中で古くから大切にされてきました。

マントラとは、単なる音や言葉ではなく、心を安定させ、適切な効果を生じさせるものという意味を持っています。
そして、そのマントラを反復して唱える行為が「ジャパ」です。

ヨーガでは、このマントラという音そのものを瞑想の対象とします。
音に意識を向けることで、散らばりやすい心の動きを一つに定め、意志の力で集中を保ち続けていきます。
心が別の考えへ流れていっても、また音に戻る。
その繰り返しが、瞑想の練習です。

大切なのは、機械的に唱えることではありません。
音が持つ意味を理解し、心を向けながら唱えることで、マントラは単なる音ではなく、心を内側へ導く確かな支えになります。
音と意味の両方に意識を向けることで、思考や感情の波は次第に静まり、集中は自然と深まっていきます。

ジャパ瞑想は、特別な才能や能力が必要なものではありません。
自分の心の動きを自分で扱うこと、それ自体が瞑想の練習です。外の出来事や思考に流されがちな心を、音という一点に戻し続けることで、私たちは「心に振り回される側」から「心を観て使う側」へと立ち位置を変えていくことができます。

第28節は、ヨーガの教えが抽象的な思想ではなく、日常の中で実践できる心のトレーニングであることを示しています。
マントラというシンプルな道具を通して、心を一つに定め、静けさへと近づいていく。その積み重ねこそが、ヨーガの実践だと言えます。

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