このブログでは、ヨーガ哲学の古典『ヨーガ・スートラ』を、一節ずつ丁寧に読み解きながら解説しています。
原典の考え方を大切にしつつ、現代の心のあり方や日常生活と照らし合わせ、その意味を考察しています。
ヨーガをポーズだけでなく、心の仕組みや生き方の智慧として理解することを目的に綴っています。
今回の記事も、その流れの中の一節についての考察です。
ヨーガ・スートラ第1章33節
『他人の幸福、不幸、善行、悪行に対するそれぞれの慈、悲、喜、捨の態度を養うことは、心素を清浄にさせる』
解説
第33節では、心を清らかで安定した状態に保つための、四つの基本的な心の態度が示されています。
それは、
喜びに対しては喜びをもって接すること、
苦しみに対しては慈しみを向けること、
善なるものに対しては敬意や称賛を抱くこと、
不善や害となるものに対しては執着せず距離を取ることです。
パタンジャリはここで、
外の出来事や他者の行動を変えようとするのではなく、
それに対して自分の心をどう向けるかが、心の安定に大きく関わっていると示しています。
人は、他者の成功に嫉妬したり、他者の苦しみに苛立ったり、
価値観の異なる行動に強く反応することで、
自ら心を乱してしまうことがあります。
第33節は、そのような反応の仕方を見直し、
心が濁らない方向へ整えていく指針を示しています。
この四つの態度は、
道徳的に「こうあるべきだ」と押し付けるものではありません。
心を不必要に消耗させず、
静けさと明晰さを保つための実践的な心の使い方として説かれています。
第33節は、
集中や瞑想を深めるためには、
日常における感情の向け方そのものが土台となることを示している節だと言えるでしょう。
現代視点での解釈
第33節では、心を穏やかに保つための四つの態度が示されています。
それは、喜びに対しては共に喜び、苦しみに対しては思いやりを向け、善い行いには敬意を払い、害となる行いには必要以上に関わらないという姿勢です。
この節が扱っているのは、出来事そのものではなく、それに対する心の反応の選び方です。
現代の生活に置き換えると、人との関わりの中で起こる感情の扱い方に近いと言えます。
誰かが評価されたときに自分と比べて落ち込んだり、
誰かの悩みに触れたときに重たさを抱え込みすぎたり、
価値観の違う言動に強く反応して疲れてしまうことは、誰にでもあります。
第33節が示しているのは、そうした場面で無理に感情を抑え込むことでも、相手を変えようとすることでもありません。
喜びには素直に心を開き、苦しみには優しさを向け、健やかな在り方には敬意を払い、心を乱すものには距離を取る。
この態度を選ぶことで、心は必要以上に揺さぶられず、落ち着きを保ちやすくなります。
ヨーガでは、心の安定は特別な瞑想の時間だけで作られるものではなく、
日々の人間関係や感情の向け方の積み重ねによって育つと考えられています。
第33節は、社会の中で生きながら心を整えていくための、非常に現実的な指針を示している節だと受け取ることができるでしょう。
